観劇後に作品への理解や余韻を深めることができるアフタートーク。そうした対話を観劇前にも設けることで、作品とのより能動的な出会いに繋げられたら…。そんな思いからスタートしたのが、東京にこにこちゃんの萩田頌豊与がホストを務める【before talk同世代劇作家対談】。ゆうめいの池田亮を迎えた初回を経て、第二弾のゲストは、10月15日よりザ・スズナリにて2年ぶりの新作『善人はなかなかいないっぽい』が開幕するコンプソンズの金子鈴幸。「友達すぎる」という二人の出会いから、互いがそれぞれにとってどんな存在であるか、歩みと現在地、そして、二人が取り組む新作の創作背景や見どころまでをたっぷり語り合ってもらった。
◆10年来の盟友であり戦友 売れる時は一緒に売れたい
金子:対談なんか初めてじゃない?
萩田:友達すぎるからね。照れますね。出会いは、それこそコンプソンズ新作『善人はなかなかいないっぽい』のキャストでもあるhocotenさんがやっていたオルギア視聴覚室ってイベントでしたよね。
金子:その時参加していたのが、コンプソンズ、東京にこにこちゃん、地蔵中毒、春とヒコーキでした。春とヒコーキに関しては初ライブでしたよね。
萩田:そうそう。なんなら俺もイベントに出るなんてほぼ初めてで、誰のことも知らなかった。コンプソンズは大宮・細井・金子でコントやってましたよね。めちゃくちゃ尖ってた!
金子:いやいや! それで言うと、この人こそすごい変で。ほぼ初対面でお父さんが死んだ時の話をしてきたんですよ。
萩田:いや、これはね、当時俺の中で、父親が腐って死んでいたのを発見した話をしたら仲良くなれる、っていう定説があって。自分の一番深いところを見せる、じゃないですけど、そういう俺を「面白い」と言ってくれる人とは大抵仲良くなれたんですよ。金子もそうだった。そっから割とすぐ遊ぶようになったんですよ。コンプソンズが明治大学で上演した『アイコ、セブンティーン』っていう伝説の公演があって、俺はそれだけが観れてなくて、以降は全部観ていますね。
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金子:『アイコ、セブンティーン』懐かしいですね。アイコ様って高校生が主人公のね。
萩田:その後に上演したのが『センチメンタル・ジャニー』っていう作品でこれもめちゃくちゃヤバかったんですよ。ジャニーさんの一代記で、9割言っちゃいけないこと言ってるような演劇で。ああ、尖るってこういうことなんだ、と。それを教えてくれたのが、金子くんと地蔵中毒の大谷(皿屋敷)くんだったんです。俺、こんな敵わない奴らと出会っちゃったんだ、って思いましたね。金子くんと大谷くんはずっと背中を見てる。友達だけど、常に前にいて追いかけているような。そんな存在ですね。
金子:いやいや、何を言うんですか。『ピカソぶっ飛ばせなくて、ごめん』で初スズナリ先越されて、早々に完売して追加公演でしょ。もはやボコボコにされた感じですよ。
萩田:俺にしてみたら、やっとここまで来たって感じですよ。だって当時のにこにこちゃんは全ステージで50人くらいしか入ってなかったんですよ。一方、コンプソンズや地蔵中毒は1日で50人以上集客していて。こんなこと、ここでしか聞けないけど、金子は俺のことどう思ってた? 金子だけは俺の作品をずっと観に来てくれていたんですよ。でも、実際のところどう思われているかは分からなかった。端的に聞きますね。俺、売れると思ってた?(笑)
金子:小さい頃から小劇場演劇を観ていたこともあって、狭いところで足の引っ張り合いを結構目の当たりにしてたんですよ。下北の珉亭で「アイツ、テレビ出て芝居ダメになったよな」とか先輩の俳優が言っているのを見るにつけて、すごい嫌だったんです。
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萩田:ああ、あるあるですね。
金子:そうそう。近いところで「売れたね」とか言い合うのも嫌だったし、売れる・売れないで言うのであれば、かたまりで売れればいいって思ってた。だって、オルギア視聴覚室という場で鮮烈に出会ってしまったわけだから。俺は昔からそういうのを割と大事にしていて、10周年公演という節目にhocotenさんに出演してほしい、と思ったのもそういう背景があるからなんです。俺たちは全員で売れるべきだ。そういう気持ちはありましたね。
萩田:そうだよな。聞いといてなんだけど、金子がそう思っているんだろうなっていう、その感じは伝わっていました。誰が売れてとか、絶対そういう言い方をしなかったもんね。
金子:こいつが売れるとか売れないとかで考えたことなかった。今からすっごい烏滸がましいこと言いますよ。
萩田:いきましょう。
金子:地蔵中毒が大人計画みたいな売れ方して、コンプソンズがナイロン100℃みたいな売れ方して、にこにこちゃんがサモ・アリナンズみたいな売れ方して、みんなそれぞれ売れればいいって思っていましたね。それでシーンを作ればいいって。
萩田:金子ってね、熱いんですよ。でも、その熱さがあんまり周りには伝わらない。俺はそれがもどかしいの。みんなが思う何十倍もすっげー熱くていいやつなんです! 俺が本当にめちゃくちゃだった時も金子だけは見捨てないでいてくれたし心配してくれた。
金子:頌豊与さんもめちゃくちゃ尖ってましたからね!
萩田:本が書けなくなった時も真っ先に電話しますからね。世界で1番いらない電話なんですけど、ただお互いの傷をなめるっていう。「お前は最高だ」っていうのと、「書けねえ」っていうのを永遠言い合う、みたいな…。
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金子:結婚の証人もやってもらってますしね。
萩田:俺が開いたバカデカ合コンで出会ったんですよ。19対19っていう多分日本で1番多い合コンで、蓋を開けてみたら知り合いばっかの集まりなのに、金子だけがちゃんと恋をしたんですよ。素敵ですよね。そりゃ俺が証人でしょう!
金子:思い出話が多すぎる!
◆コンプソンズの武器がスパーク? 2年ぶりの新作で描きたいもの
萩田:唐突に聞くけど、どうですか? コンプソンズの新作は。最近、サブカルと決別しようとしているようにも見えるけど。
金子:サブカルを切ったつもりはないし、今回もネタとしてはあります。でも、本質じゃなくなった感じはありますね。分かる人と分かんない人がいるっていうのがあんまり良くないというか、作品を観る上でノイズになっちゃわないようにしないとなと思って…。
萩田:でも、そこも含めて武器になったら超強いよね。本質の裏にサブカルがちゃんとあるっていう見え方はかっこいいし、コンプソンズがずっとやってきたことの意味があるなって思う。俺は、やっぱりコンプソンズはサブカルを切り離さない方がいいって思っているから。どの作品でもエッセンスとしてサブカルを感じられるのが、俺にとっての理想のコンプソンズとサブカルの関係性だなって思う。あらすじを読む限り、戦争の話でもあるんだよね。戦争はこれまでも描いていたけど。
金子:出発点はそうですね、祖父がベトナム戦争の反戦運動をしていたので、それがなんとなくモチーフとしてあって。そこにとどまらない群像劇にはなりましたけど。書き終えて、やりたいことはできた気がするというか、いい意味で、どういう気持ちになるかが予測できない作品になったと思います。これも劇作家あるあるかもだけど、なんか、どうしても過去のうまくいった公演と比べちゃうじゃないですか。
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萩田:まさに戦争を扱った、岸田の候補にもなった『愛について語るときは静かにしてくれ』ね。
金子:そうそう。エモーションが爆発する感じがあったし、今回もああいう風になればいいなと思っていたけど、そうはあんまりならず、でもなんかある違う形でエモーションになった気はしています。
萩田:金子が最後に、ラストに求めるものって何? 金子も俺も多分最後はめちゃくちゃにしたいって欲があると思うんだけど、多分コンプソンズの方がよりピュアというか、なるべくしてなったっていう、計算のなさを感じるんだけど。
金子:『愛について語るときは静かにしてくれ』に関してはある程度は計算されていた気がします。この間、久々に読み比べたんすけど、意外とよくできていると思いました(笑)。魂がこもっているとかじゃなくて、単純に話として。最後をめちゃくちゃにするとお客さんが離れちゃう場合もあると思うから、頌豊与が言うようになるべくしてなるめちゃくちゃさが必要なのかなとは思います。論理的にも感情的にもちゃんとむちゃくちゃになってそこに筋が通っている感じというか。そういう、むちゃくちゃさは目指している気はします。だから、ラストに求めるものとしてはやっぱりカタルシスってことになりますかね。
萩田:そこは共通点な気がしますよね。今回、配役とかはどんな感じなの?
金子:細井じゅん演じる反戦運動をしている男・大介がいて、その親友の役を大宮二郎が演じていて、劇団員にドラマを担ってもらうということがまずコンセプトとしてあるかな。さらに、大介の周囲の人間がいて、恋人役を過去作にも出てくれている村田寛奈さんにやってもらうんですけど、彼に反戦運動をやめてほしいと思う一方で、彼女もシンガーソングライターとして「アーティストも反戦の声を上げるべきじゃないか」みたいなことを言われているんですよ。大介が反戦運動に突っ走っていく中で、周りの人がどんどん疲弊していくみたいに始まって、そこに突然夏アンナさん演じるフェミニストっぽい女の人が現れるんですね。大介の運動に共感を寄せて活動をサポートしたい、と言い出して…。
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萩田:面白そう!
金子:川島潤哉さんは大介のお父さん役で、通勤で息子の反戦運動が目に入るのが嫌になって気づいたらガールズバーに逃げ込んで常連になっちゃうんですね。で、息子の親友と会っちゃったりするんですよ。劇団員の星野花菜里はそのガールズバーの店員でhocotenさんもそのパートに出てきます。ガールズバーを舞台にした人間関係や会話劇も結構描かれますね。で、平田敦子さんは、大介の父の過去を知る謎の人物みたいな…。
萩田:お父さんにも何か過去があるんだ。
金子:そうですね。お父さんのドラマがかなり大きいかも。父子家庭っていう設定で、で、いなくなってしまった母親に関係している過去を平田さんが知っている、みたいな。
萩田:そこらへんにちょっとSFっていうか、異世界への扉がある、みたいなことか。
金子:まさにそう。
萩田:いやあ、面白そう。勝負を仕掛ける作品を連チャンで作らなきゃいけない中で、やっぱりどっかで変わんなきゃとか、新しいものを作んなきゃとか、やってきたものを捨てなきゃとか、そういう意識が作家の中に根付いてくると思うんですけど、俺は絶対そんなのやんなくていいと思うし、自分の得意分野をやった方がいいって思う。だから、今回も戦争とかサブカルとかSFが混ざり合う面白さも含めたコンプソンズ節が楽しみですよ。
金子:しかも、スズナリでね。
萩田:これがめちゃくちゃうれしいんですよ。本当に2人で同じ年にやれて。
金子:でも、にこにこちゃんは完売してるから…。
萩田:それすげえ言うじゃん! 今回金子も出るんでしょ?
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金子:出ます。俺だけが捨てキャラみたいな群像劇ですね。
萩田:なんか「劇団公演にはもう出ない」とかも言ってなかった?
金子:一時期言ってましたね。
萩田:金子は絶対出た方がいい。俳優としてもめっちゃいいから。作・演出が出ると俳優とはまた違う独特な意味を持っちゃうこともあるんだけど、出ることによってちゃんと空気を変えることができるのはすごい。アンパサンドの安藤さんとかも同じ。あの人が喋るだけでまたちょっと違う空気になるから。それって、奥に行けば行くほど難しくなるじゃないですか。安藤さんも金子もそれができるし、物語とか全部においていい作用しかないと思う。しかも金子はメタの匂いも残しつつ出るからずるいよね。自分には絶対できないから羨ましくてしょうがない!
「もうサブカルはやめる」とか「もう出ない」とかなんで言っちゃうの? 結局やめないし、出るのにさ!
金子:それはもう宮崎駿が言ってるからですよ。烏滸がましくも!
萩田:あははは!
金子:大丈夫? これちゃんと実りあるトークになってます?(笑)
◆同世代の劇作家として岸田國士戯曲賞に思うこと
萩田:あと、お互いが共通して思ってることと言えば、岸田取りたいなってことかな。
金子:あいつだけは許さない、池田亮。これは書いて大丈夫です。許さない…。
萩田:この対談シリーズで初めて会って話して、池田くんめっちゃ面白かった。でも俺も「いけすかねー!」って言ったし、そのまま記事化されてる! 読んでほしい!
金子:読みましたよ。「受賞の連絡もらった時、電話がかかってくることすっかり忘れてた」っていうのも腹立つ! 俺なんか電話しか待ってなかったよ! 許さない! しかも、俺授賞式で余興までやったんですよ。前代未聞ですよ。全部池田の罠! これも書いて大丈夫です! 友達だから言えることなんで!
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萩田:池田くんにせよ、あの時に一緒にノミネートされた安藤さんにせよ蓮見にせよ、みんな受賞したもんね。
金子:うわ、嫌なこと言うじゃん! そうだよ、俺だけだよ。
萩田:でもさ、身近な友達がちゃんと獲ってるのはすごいよね。友達が岸田を受賞する世界線なわけですよ。こっわ。だから、金子と池田くんみたいに一緒に最終候補に残っていたらマジ悔しいし許せないけど、俺としては「だったら受賞してほしい!」って気持ちだったよ。金子のことずっと見てきたし。
金子:でも去年の盛り上がり見たら、もういいんじゃないかって気にもなりますね。最終回みたいな盛り上がりだったじゃないですか。だから欲しくないと言ったら語弊があるけど、でもなんかもうあそこまで盛り上がると…。
萩田:たしかに、あの盛り上がりはすごかったですよね。
金子:ただ、今もそうだけど、実際に本を書いているときは本当にそんなことは考えないじゃん。岸田がどうとか。そんなことは頭になくて、まずは書き終えて、上演として作品をしっかり成立させることしか頭にないし、とりあえずこの作品が面白ければいいという気持ちだけですよね。だから、公演が終わってからなんですよ。岸田のこととか考え出しちゃうのって。
萩田:それは本当にそうだね。どんな上演にしたいかだけだよね。あと、本が遅れたら役者に謝る! そのことしか考えてない。
金子:分かる。そういうもんですよね。
◆12月上演の『ソックとバスキン』 金子鈴幸は死刑執行人役?!
萩田:12月に開幕する、佐久間麻由さんと立ち上げた新ユニット、ソックとバスキンには金子にもキャストとして出てもらうんですよ。絶対出てほしかったからうれしいですよ。
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金子:こちらこそありがとうございます!
萩田:キャスト、超ベテランのうまい人ばかりだから、下手なものを見せるわけにはいかない。そういう怖さはありますね。にこにこちゃんの本公演が終わってホッとしてたけど、まだこれからあるんだなって。
金子:いや、すごいことだと思うよ。やっぱり書き続けている人が強いと思うから。
萩田:フライヤー見た? めっちゃいいでしょ。見ようによっては金子が全員を包み込む中心人物にも見える構図で! 久しぶりに一緒にできるの、楽しみですよ。
金子:そうそう。前にも1回東京にこにこちゃんの短編に出たことがあって…。
萩田:あの時も金子は俳優としても天才的だと思ったよ。廃墟を何人かで見て回って、全然何も起きないっていうコントだったんですけど、金子が「おしっこ漏らしちゃった」って叫ぶだけのシーンがあったんですよ。台本上ではね。
金子:ああ、あの最悪のシーンね!
萩田:本番でこいつなぜか「おしっこ漏らしちゃった! あ、なんだこれ!血だ! ワインだ! キリストだ!」って言ったんですよ。マジで爆笑だったな、あれ。
金子:違う違う。「おしっこ漏らしちゃった! あ、なんだこれ! 血だ! ワインだ! パンだ! キリストだ!」だよ。二の腕をパンにして齧りながら言うんだよ! じゃないと意味分かんないじゃん!
萩田:じゃなくても意味分かんねえよ!(笑) 最高は最高だったけどさ、なんでいきなりああなったの?!
金子:そんなの知らないですよ! 自分の作品じゃないから知らない!
萩田:そう、これこれ。この感じですよ。金子の自分の作品じゃない途端に脱力してめちゃくちゃやる感じ、超いいんですよ。だから、今回の『お気に召すまま笑わせて』もすごい楽しみ。思う存分暴れてほしい。
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金子:俺がやるのはどんな役でしたっけ?
萩田:誰も笑わせることのできない道化師とどんなことでも笑う王妃の話で、金子が演じるのは王妃を死刑にかける執行人の役です。
金子:重要人物ですね!
萩田:それも全部喜劇としては描くんだけど、死に向かわせる人としての役割は逃れられないので、コメディでなくなる一瞬があると思うんです。ヘラヘラしたものが一気に硬直する。その瞬間を金子に託したくて。重要ですよ。
金子:がんばります!
萩田:まずはちゃんと本書かないと!
金子:俺、書こうか?
萩田:なんでだよ!(笑) でも、座組みにいてくれるのはマジで助かる。
金子:いやあ、自分の作品じゃないって、超気が楽だね! がんばって!
萩田:いやいや、その前にコンプソンズだよ! そっちこそがんばって! はい、友達対談これにて終了! あざした! よし、ねぎし行こ!
(取材・文:丘田ミイ子)
コンプソンズ#14 『善人はなかなかいないっぽい』は、10月15日~20日東京・下北沢 ザ・スズナリにて上演。
演劇ユニット「ソックとバスキン」第1弾公演『お気に召すまま笑わせて』は、12月2日~6日東京・新宿シアタートップスにて上演。
※宮崎駿の「崎」は「たつさき」が正式表記
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