アーティスト・俳優として大作や話題作のメインキャストを次々と務める松下優也を主演に、劇作家・演出家の河原雅彦がダークでゴシックな世界観で描く『THE ALUCARD SHOW』。2013年に初演、その後も劇中に登場するグループ「アルカード」をもう一度観たいという熱い声に押されて再演を成し遂げた本作が、12年ぶりに3度目の上演を迎えている。10月6日、会場となる日本青年館で行われたプレスコールの模様をお届けする。 幕が開くと、サングラスをかけたいわくありげな女性サラ(野口かおる)が登場。「この世から姿を消した狂気のダンスユニット、アルカード」について語ると、彼らのマネージャーだったウォルター(坂田聡)も登場し、当時の様子を振り返る。次いで舞台中央から車椅子に乗ったかつてのスター、マリア(彩風咲奈)が現れて指を鳴らすと、アルカードのメインテーマと共にブラド(松下)とオルロック(平間壮一)、カーミラ(SANTA)、ジルド(滝澤諒)、サンジェルミ(赤名竜乃介)、ポプシー(山野光)、バット(瀧澤翼)が登場。圧巻のパフォーマンスで、客席を引き込んでゆく。
松下は圧倒的な歌唱力と存在感で、“カリスマボーカリスト・ブラド”そのもの。同役も3度目なだけに、パフォーマンスの合間も目を細めて客席を見つめたり、フラリと動いてメンバーたちと絡んだりと、ブラドと松下自身の境目が分からなくなるほどだ。そして今回の「アルカード」のメンバーも、それぞれにダンサーとして高い評価を得ている面々。ダンスはもちろん、それぞれに特徴のあるミステリアスな表情を追っているだけで、背後に広がる彼らの“物語”まで伝わってくるようだ。
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また今回が初参加ながら、登場早々、黒衣の姿としゃがれた声で挑発するように語り始める彩風はさすがの貫禄。妖しくも魅惑的な本作の世界へ、客席を一気に連れてゆくようだ。
黒づくめの「アルカード」が退場すると、入れ替わるように白い衣裳のマリアが登場し、ダンサーと共に「マリア」をパフォーマンス。ところが“お綺麗で清潔な”スター像から脱却したいマリアは気に入らず、マネージャーのウォルターに新しいダンサーたちを要求する。以前に出会った“彼ら”を探しているが、なかなか見つからないとぼやくウォルター。坂田はマリアを育てあげながらも、彼女のわがままに振り回される芸能マネージャーらしいペーソスをにじませる。
ここで注目は、彼の回想シーンで登場するアルカードメンバー。ひとりずつパフォーマンスをしてバックスクリーンに名前も映し出されるので、気になるメンバーはここでしっかりチェックしておきたい。
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マリアとウォルターがミーティングがてら中華レストランに到着すると、どこからかアルカードメンバーが登場し、無言のままクールなパフォーマンスを繰り広げる。気に入ったマリアはツアー「RE‐BORN」で早速アルカードメンバーを帯同することに決める。
コンサート本番。ライブが盛り上がる中、途中でマリアとアルカードメンバーがストップモーションで動きを止めると、会場の外でニセモノのグッズを売ろうとしているサラがマリアたちに絡むシーンに。野口は河原と同世代の小劇場出身だけに、ここでは“ダル絡み”の妙とそれに耐える彩風たちという、ある意味貴重なひと幕が楽しめる。
マリアのライブシーンが再開して会場の熱気も最高潮に至る中、舞台に突然現れた巨大な蝙蝠のシルエット。ブラドが登場して「BORN」を歌い上げると、彼を待っていたかのようなアルカードメンバーのパフォーマンスが爆発する。客席は大歓声の渦となり、主役の座を奪われてしまうマリア。ブラドを含めた7人は「アルカード」と名乗り、プロフィールを明かさないという謎も相まって、彼らは瞬く間に社会現象となってゆく。
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振付は、羽生結弦のアイスショーなどを手掛けるMIKIKOや、三浦大知の振付などでも知られる SHINGO、レディー・ガガのワールドツアーに参加経験のあるSAYAが担当。アルカードメンバーたちのクールで艶のあるダンスに注目だ。
プレスコールは上記のシーンまで。ライブ感覚を堪能できるエンタテインメント・パフォーマンスショーとして、その後の展開と、ブラドやメンバーたちの素性、さらにマリアの人生の行方はぜひ劇場で確認してほしい。
プレスコールの後に公開されたキャスト・スタッフコメントでは、「12年ぶりにブラドという役を通して、改めてこの作品と向き合い、これまでの時間を振り返りながら稽古に挑むことができました。時を経ても、やっぱりこの舞台は斬新で、唯一無二のエンターテイメントだと思います。自信を持って、最高の時間をお届けします。12年間待っていてくれたアルカドニア(※アルカードファン)のみんな、そしてこれからアルカドニアになるみんな。アルカードに逢える機会は限られています。2026年の僕達をお見逃しなく」と本作への想いを語った松下。
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「この作品が皆様に愛される作品になること、そして改めてダンス、エンタメって楽しい、もっともっと見たいと思ってもらえるように頑張ります」(平間)、「僕もアルカドニアとして、とても楽しみです! 僕自身は今回新メンバーということなので、また違ったカーミラの魅力に溺れてもらえたらうれしいです」(SANTA)、「今作を『欲と愛に満ち溢れた混沌の作品』と捉えます。幸せという概念が存在するからこそ不幸という側面も生まれ、ブラドが舞い降りる。終わりのない流れのようにも感じますがアルカドニアの皆さんとしてはそれも1つの幸福、なのでしょうか」(滝澤)、「『THE ALUCARD SHOW』でしか味わえない体験がいくつもあると思います。あえて言葉にはせず、ぜひ劇場で体感していただきたいです」(赤名)、「言葉を発さない分、顔の表情や空気感、存在の圧で心情やシーンを表現しなければいけないところは、とてもやりがいのあるところだなと感じています」(山野)、「パフォーマンスでは激しさと繊細さを使い分けて個性を出しつつ、アルカードメンバーと重ねてきたものを毎公演情熱的に表現できたらと思います」(瀧澤)と、メンバーたちもそれぞれに意気込みを伝えた。
坂田が「稽古場での悪戦苦闘の末、なんとか皆様の期待に応えるウォルター像に仕上がったと自負しております。役者陣、スタッフ陣一丸となってワンチームでつくりあげました。とにかくアルカードたちの稽古の熱量には目を見張るものがありました。必見です」と語り、野口も「欲望の集合体の肥やしになるか。意思ある熱源として神と対峙するか。迫られています。他人のお墨付きや、世間の風向きを読むのではなく、自分から湧いた泉を手掛かりに、席に座ることです。自分だけの物語がはじまるでしょう。答え合わせは、自分の中にしかない」と熱く語る本作。
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彩風の「開幕の足音が、刻一刻と近づいている今、ものすごい緊張と高揚感に包まれています。と同時に、改めてマリアとしてこの『THE ALUCARD SHOW』の世界に生きられることを、とても幸せに感じています。『THE ALUCARD SHOW』でしか得られない何かがある――そう確信する日々です。ブラドとアルカード達が創り出す、圧倒的なパフォーマンス。その世界に、お客様の心も呑み込まれてしまうのではないかと、少し心配なくらいです。熱狂……絶叫……? ぜひご体感ください」というコメントが、本作の魅力を伝えている。
「12年ぶりのアルカードショー。ここまできて改めて思うのだが、この舞台は一般のソレとは全く違う、かなり異質な作品だ。徹底的にスタイリッシュ、そしてグロテスクに作り込まれたこのショーは、単なるミュージカルとは一線を画し、まさに『THE ALUCARD SHOW』としか言い表せない圧倒的なオリジナリティを有している。そして一切の色褪せも感じさせない。主演のブラド(松下優也くん)を筆頭に、今回のアルカードもバキバキに仕上がりまくっております。ぜひこの機会に劇場に足をお運びください。そして、どうぞ心ゆくまでお心を支配されて下さいませ」との河原の言葉を胸に、ぜひ劇場へと足を運んでほしい。
(取材・文:藤野さくら)
『THE ALUCARD SHOW』は、10月6日~22日東京・日本青年館ホール、10月29日~11月1日大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。
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