神殺しの大英雄が、病弱な貴族令嬢へと転生――。南野海風の人気ライトノベルを原作とするテレビアニメ『凶乱令嬢ニア・リストン 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録』。可憐な少女の姿に歴戦の武人の魂を宿す主人公・ニアを演じるのは、声優の井上ほの花。「この子を私に演じられるのかな」と不安を抱いた彼女に、ニアの“圧”や戦いへの高揚感を表現する難しさ、共演者に支えられた収録、そして声優として大切にする生き方までを聞いた。
■「この子を私に演じられるのかな」かわいらしさと武人のすごみの間で
――最初に原作や台本を読んだ際、主人公・ニアにどのような印象を抱きましたか?
井上:「すごいギャップのある子だな」と思いました。見た目はとてもかわいらしいのに、中身は武人。「この子を私に演じられるのかな」と、最初は不安もありました。単純な力強さなら、声を「バーン」と出すことで表現できるかもしれません。でも、ニアが持つ独特の圧や、戦いを前にして内側からふつふつと湧き上がる高揚感、「戦うのが楽しい」という気持ちを、どう声に乗せればいいのだろうと悩みました。
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オーディションのときから、「サイコパスにはしないでほしい」とディレクションをいただいていたんです。狂気じみた雰囲気や不敵さはありつつも、決してサイコパスにはしない。そのさじ加減が本当に難しくて。特に収録の序盤は自分でも正解が分からなくなり、「これでニアになれているのかな」と迷いながら演じていました。
――幼い令嬢と歴戦の武人。ニアが持つ二つの顔は、どのように演じ分けたのでしょうか?
井上:音響監督の菊田浩巳さんからは、「ニアが今どこにいるのか、場所を意識してほしい」と言われていました。ヒルデやレリアと学院で過ごしているときのニアは、とても子どもらしいんです。そういう場面では、武人としての顔はあまり表に出しません。二つの要素を常に同じように混ぜるのではなく、ニアがいる場所や向き合う相手によって、どちらの顔を前に出すのかを考えるようになりました。
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一方、弟子たちに何かを教える場面では、自分の中に一本の芯が通っていなければ、教える立場としての説得力が生まれません。そこでは内側にぐっと強いものを持ちながら、歴戦の武人としてのニアを演じるようにしました。
――ニアは作中で圧倒的な強さを誇ります。その強さを、経験豊かな先輩方との芝居の中で成立させる難しさもあったのではないでしょうか?
井上:やはり実際にお芝居でぶつかると、その迫力にどうしても自分が負けてしまっているように感じることがあって。物語の上では、ニアが勝つと分かっています。でも、声の芝居として、私がニアとして本当に先輩方に勝てているのだろうか……。そう不安になることも多かったです。
その迷いをくみ取ってくださったのか、先輩方や音響監督の菊田さんが、「ここにもっと力を入れてみよう」と、体の使い方まで丁寧に教えてくださいました。周りの皆さんに支えていただきながら、ニアの強さや「氣」の表現をつかんでいくことができたので、本当に恵まれた収録現場だったと思います。
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――魔法映像(マジックビジョン)ひろめ隊として、ヒルデ役の本泉莉奈さん、レリア役の日高里菜さんとエンディングテーマも歌唱されています。どのような楽曲になっていますか?
井上:ニア、ヒルデ、レリアの3人が過ごす日常を、そのまま一曲にしたような楽曲だと思います。3人でお茶を飲みながら作戦会議をする場面がよくあるのですが、その空気感が曲にも詰まっているんです。
セリフのようなパートもあって、作品の時代感を感じられるところも面白いです。とてもかわいらしい曲なのに、『ニア・リストン』の世界観からは離れていない。学院で過ごすニアの日常を切り取ったような、等身大の彼女を感じられる曲なので、歌っていてすごく楽しかったです。
セリフの部分からも、「ニアはヒルデとレリアに、こんな言葉を口にできるほど心を許しているんだな」と感じられて。私自身、とても好きなエンディングテーマです。
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――楽曲から伝わる3人の距離の近さは、実際の収録現場にも通じるものがありましたか?
井上:本泉さんと日高さんは、本当に優しくて。3人でいるときは、お菓子や食べ物の話ばかりしていました(笑)。「あそこのお菓子がおいしい」と話していたら、日高さんが次の週にわざわざ買ってきて、皆さんに差し入れしてくださったこともあります。朝早くから2時間ほど並んで、「みんなに食べてもらいたかったから」と持ってきてくださって。その優しさが本当にすごいなと思いました。
お二人は収録のたびに、「本当にすごいよね」と私のことを褒めてくださったんです。その言葉を聞くと、自分の中で背負っていた荷物が、すっと下りていくような感覚がありました。作品の中だけでなく、収録現場でもお二人に支えていただいていたと思います。
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■「考えすぎない」数字の時代に守りたい自分らしさ
――ニアは、夢中になれるものを見つけると一直線に突き進む人物です。井上さんご自身が、時間を忘れるほど夢中になってしまうものはありますか?
井上:毎週楽しみにしているのが、高校生の恋愛リアリティーショーです。見ながら涙してしまうこともあって、「私、高校生の恋愛を見て、こんなに泣けるんだ」と自分でも驚きました(笑)。見ていると、すごく純粋な気持ちになれるんです。
この仕事をしていると、学生の役を演じる機会も多いので、それも関係しているのかもしれません。高校生くらいの子たちの恋愛を見ていると、「この年頃なら、こういう気持ちになるよね」と共感したり、「いいな」と心が動いたりします。
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――ニアは第二の人生を、自分が本当に望むことのために生きています。井上さんが今、声優として大切にしたい「自分らしい生き方」とは、どのようなものでしょうか?
井上:私には、「考えすぎないこと」が合っているのかなと思います。考えすぎると、自分の欠点ばかりが目についたり、「こうしなきゃいけない」「これができていない」と自分を追い込んだり、誰かと比べてしまったりする。そこから生まれるものは、私にとっては負の感情ばかりなんです。
この仕事をしていると、見てくださる方の反応は、良い意味でも悪い意味でも気になります。でも、一人で考え込みすぎるのではなく、「自分はこう見えているんだ」「そう感じる方もいるんだ」と、まずは受け止められたらいいなと思っています。そこで自分も直したいと思えば直せばいいし、「それは違う」と思うなら、無理に変えなくてもいい。そのくらいの距離感でいたいです。
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――その考え方は、SNSとの距離にもつながっていますか?
井上:そうですね。SNSはあまり得意ではなくて。一つ投稿するだけでも反応が数字で見えてしまうので、知らず知らずのうちに、自分の中で作品に優劣が生まれてしまうような気がするんです。
たとえば、ゲームで自分の演じたキャラクターが実装されていたことに後から気づくと、「時間がたっているのに、今から投稿してもいいのかな」と迷って、結局発信できないこともあります。別の作品については投稿したのに、こちらはできなかったとなると、自分ではどの作品も平等に大切にしているのに、差をつけているように見えてしまう気がして。それが嫌なんです。
自分の中ではすべて大切なのに、発信の有無や反応の数字によって、特定の作品だけを大きく扱っているように感じてしまう。だからこそ、数字や周りの反応に引っ張られすぎず、自分に必要な言葉は受け止めながらも、考えすぎずに進んでいきたいです。
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――最後に、放送を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。
井上:第1話は、冒頭から驚かれる方が多いのではないかと思います。特に原作を読んでくださっている方ほど、「ここから始まるんだ!」と驚くようなところが、たくさんあるはずです。
物語は現代的なテンポでスピーディーに進んでいきますが、一つ一つの場面では時間の流れが丁寧に描かれています。少し懐かしさのある中世的な世界の美しさも、この作品ならではの魅力です。第1話を見たら、きっと第2話、第3話と、次々に気になることが出てくると思います。
今はSNSを開くと、前向きな言葉だけでなく、心が重くなるような言葉も目に入る時代ですよね。だからこそ、『ニア・リストン』を見て、そうした気持ちをスカッと吹き飛ばしてもらえたらうれしいです。ニアが戦う姿から感じられる爽快感を、毎週楽しみにしていただきたいです。
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物語の中でニアはどんどん成長していきます。私自身も、その成長に追いつこうと必死にアフレコに臨んできました。一緒に演じたキャストの皆さんをはじめ、本当にたくさんの方のこだわりが詰まっているので、ぜひ一つ一つ見つけていただけたらと思います。
連続2クールの放送を通して、この作品が皆さんの秋と冬の毎週の楽しみになれたらうれしいです。
(取材・文・写真:吉野庫之介)
テレビアニメ『凶乱令嬢ニア・リストン 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録』は、TOKYO MXにて毎週火曜21時25分、MBSにて毎週火曜27時30分、BS日テレにて毎週火曜24時30分より放送開始。
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