『名探偵コナン』と『名探偵プリキュア!』。本来交わるはずのなかった2つの物語が、いまひとつの画面に並び立つ。その出発点は、ひとりのプロデューサーの「コナンが好き」という想いだった。だが、放送局の垣根を越えるという“前人未到”の挑戦は、決して簡単なものではない。関係各所の熱量と試行錯誤の末に実現した今回のコラボは、まさに“奇跡”と呼ぶにふさわしいプロジェクトだ。本稿では、監督・プロデューサー陣の言葉から、コラボ誕生の経緯、作品同士の共通点、そして融合の難しさと面白さに迫る。
■放送局の壁を越えた“前人未到”のコラボ
【コナンチーム】
■山本泰一郎(やまもと やすいちろう)監督
1961年神奈川県生まれ、埼玉県出身。アニメーション監督・演出家・アニメーター。1996年の『名探偵コナン』テレビシリーズ開始当初から参加し、第119話以降で監督を担当。劇場版にも第1作から携わり、第8~14作で監督を務める。2012年より再びテレビシリーズ監督を担当。
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■藤堂真孝(とうどう まさたか)プロデューサー
1983年生まれ、香川県出身。2005年トムス・エンタテインメント入社。テレビ・劇場版アニメーションの制作に従事。主な担当作品に『名探偵コナン』『ゼロの日常』『犯人の犯沢さん』など。CMではマクドナルド「チキンタツタ×名探偵コナン」を手がける。
【プリキュアチーム】
■川崎弘二(かわさき こうじ)シリーズディレクター
1990年生まれ、埼玉県出身。東映アニメーション所属のシリーズディレクター・演出家。2013年入社後、『マジンボーン』で演出デビュー。『プリキュア』シリーズ各話演出のほか、『ONE PIECE FILM RED』パート演出、『逃走中 グレートミッション』チーフディレクターを務める。
■荒牧壮也(あらまき まさや)プロデューサー
1990年生まれ、千葉県出身。プロデューサー。新卒から約10年間アニメ制作会社にて勤務し、2023年に東映アニメーションへ入社。『わんだふるぷりきゅあ!』でアシスタントプロデューサーを務めたのち、『名探偵プリキュア!』でプロデューサーを担当。
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――今回の『名探偵コナン』×『名探偵プリキュア!』という異色のコラボは、どのようなきっかけで実現したのでしょうか?
荒牧P:この企画は、もともと僕の中にあった「コナンが好き」という気持ちが出発点でした。だからこそ、『プリキュア』のタイトルに“名探偵”を冠した段階から、どこかでつながれたらという想いは込めていたんです。ただ、実現は正直“無茶”に近い話でもありました。
『プリキュア』は基本的に1年という限られたスパンで作る作品。その中で「やり残した」と感じることだけは避けたかった。だから半分は冗談、でも半分は本気で、「もしできたら面白いのでは」と相談してみたんです。すると、その一歩に多くの方が本気で応えてくださった。
関係各所が熱量を持って動き出し、トムス・エンタテインメントさんが「面白い!」と強く後押ししてくださったことで、流れが一気に加速しました。さらに、放送局の垣根を越えて読売テレビさんも「面白そうだ」と賛同してくださり、そこからすべてが動き始めたんです。
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藤堂P:制作会社同士の連携はこれまでもありましたが、「放送局の垣根」を越えるとなると、ハードルは極めて高い。それでも今回、その“前人未到”とも言える挑戦が実現したのは、多くの方が奔走してくださったからにほかなりません。
――川崎シリーズディレクター、山本監督は最初にこの企画を聞いた際、どのように思われましたか?
川崎SD:企画書の段階から「コナンとやりたい」という話は聞いていましたが、本当に実現できるのかと半信半疑でした。子どもの頃から見てきた作品とのコラボが、自分たちの作品で実現する。その驚きから始まり、実現の道筋が見えたときは「本当にやるのか」と強く実感しました。
社内でも「まさかコナンと?」という声が上がるほど前例のない企画で、まさに奇跡に近い出来事だったと思います。だからこそ、決まったときは純粋に光栄でした。長い歴史を持つ両作が交わる機会に関われたことを、とても特別に感じています。
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山本監督:私が最初に聞いたときは、“P案件”とだけ伝えられて(笑)。詳細がまだ見えていない状態だったので、まずは「実現できるなら面白いんじゃないか」という感覚でした。ただ同時に、「本当にできるのか」という疑問も正直ありましたね。そこはもう、上の判断に委ねるしかない領域でもありましたし。
それ以上に気になっていたのは、やはり作品同士の“世界観の違い”でした。『コナン』と『プリキュア』ではトーンも文脈も大きく異なる。そのすり合わせをどうするのか。制作上の大きな課題だと感じていました。
川崎SD:ミステリーアクションと変身ヒロインもの。まったく異なる作品をどう融合させるか。その中で、お互いの世界観を活かしながら、それぞれ異なるアプローチで組み立てていったのは、とても面白い試みだったと思います。
また今回は、両者が“出会うだけ”ではなく、しっかり物語の中に関わっていく形にしたいと考えていました。だからこそ、この出会い自体が物語として成立している点も見どころのひとつです。さらに、“かっこいい”と“可愛い”という魅力の違いがどう交わるのか。そこも楽しんでいただけるポイントだと思います。
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■『コナン』と『プリキュア』の共通点とは? 制作陣が語る成立の理由
――そんなジャンルが異なる2作品ですが、制作を進める中で感じた“共通点”は何でしたか?
荒牧P:やはり大きな共通点は、「探偵」「推理」という軸ですね。そこをベースにシナリオは組み立てていきました。加えて、実はアクションがある点も共通しています。物語の構成自体を見ても、意外と近い部分があるんです。おそらく僕ら自身が子どもの頃から『コナン』に親しんできた影響も大きいと思います。
実際、社内で『名探偵プリキュア!』の番組企画をプレゼンする際も、「コナンを想像してください」と繰り返していました(笑)。Aパートで謎が提示され、Bパートで解決する。その上でアクションを担うのがプリキュア。そう伝えることで、イメージを共有していったんです。
川崎SD:さらに構造としても、一つひとつの事件とは別に、大きな軸となる存在がいること。『コナン』で言えば黒の組織、『プリキュア』で言えば怪盗団ファントムのように、「彼らは何者なのか」という謎が物語全体を貫いている。その“大きな軸”の上に、個々の事件が積み重なっていく。そうした構成は、両作品に共通する特徴だと思います。
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荒牧P:加えて、『コナン』の魅力のひとつは、冒頭で“体が小さくなる”という大きな出来事が起きること。そのインパクトは非常に強いと感じていました。だからこそ、『名探偵プリキュア!』でも同様に、物語の入口で大きな変化を提示したいと考えたんです。主人公の明智あんながタイムスリップする設定は、まさにそこから着想を得ています。第1話の段階で「どんな物語なのか」を明確に提示する。その構造自体は、『コナン』へのリスペクトを込めて設計しました。
藤堂P:そうした意味では、主人公が“枷”を抱えている点も共通していますよね。コナンは本来の姿に戻れないまま生きており、プリキュアのあんなもタイムスリップによって元の時代に戻る目的を背負っている。つまり、どちらも主人公が完全に自由な状態ではなく、その状況を周囲が支えながら物語が進んでいく構造になっている。その点で、作品としての本質は非常に近いと感じました。
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――逆に、世界観の違いをシナリオに落とし込む上で難しかった部分はありますか?
山本監督:やはり大きかったのは、『コナン』の世界観のルールです。原作の青山剛昌先生にもシナリオを見ていただく中で、「コナンの世界に魔法やファンタジーが実在する形にはできない」という前提があり、そこは成立させる上での難しさを感じた部分でした。
荒牧P:『プリキュア』は比較的自由度の高い作品ですが、『コナン』はリアリティを重視する。たとえば、『コナン』の世界観の中で『プリキュア』の変身要素をどう扱うかなど、どこまでファンタジーを落とし込めるかが大きな壁だったかと思います。そうした中で、お互いに模索しながら形にしていった結果、非常に面白いものになったと感じています。
『プリキュア』側としては、『コナン』へのリスペクトを込めて、「これはコナンだ」と感じられる要素を随所に散りばめています。見ていただければ、その意図は一目で伝わると思いますし、同時にスタッフ自身が楽しみながら制作している空気感も味わっていただけるはずです。
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――コラボ回の放送を楽しみにしている両作のファンに向けてメッセージをお願いします。
山本監督:それぞれのファンにとって新しい魅力と出会える機会になればと願っています。『プリキュア』を見ている方には『コナン』の面白さを、『コナン』ファンの方には『プリキュア』の魅力を感じていただけたら何よりです。
藤堂P:本当に“前人未到”の取り組みだと思いますし、今後同じような形で実現できるかは分からない。それほど特別で、貴重な機会でした。だからこそ、このコラボをぜひ楽しんでいただければ幸いです。
川崎SD:『コナン』と『プリキュア』が同じ画面に並ぶ。その特別な光景を、両作品のファンの方に楽しんでいただける内容になっているはずです。「これこれ」と感じてもらえる魅力が詰まっていますので、ぜひ楽しんでご覧ください。
荒牧P:最初から最後まで楽しめるよう、さまざまな仕掛けを詰め込んでいます。「名探偵」というキーワードのもとで、両作品がここまで並び立つ映像が実現したこと自体が、まさに奇跡のようなコラボです。そのワクワクを、ぜひ体感していただけたらと思います。
(取材・文:吉野庫之介)
テレビアニメ『名探偵コナン』は、読売テレビ・日本テレビ系にて毎週土曜よる6時から放送。テレビアニメ『名探偵プリキュア!』は、ABCテレビ・テレビ朝日系列全国24局ネットにて毎週日曜あさ8時30分から放送。
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