Hey! Say! JUMPとしての音楽活動はもちろん、ドラマや舞台、バラエティー番組で唯一無二の存在感を放つ伊野尾慧。まもなく幕を開ける主演舞台『四畳半神話大系』では、ヨーロッパ企画の上田誠とタッグを組み、アニメ化もされた人気小説の世界観を舞台上に築き上げる。「まさか35歳で大学生を演じるとは」と笑う伊野尾に、本作への意気込みや自身の大学生活を語ってもらった。
◆稽古を通してヨーロッパ企画・上田誠の頭の中を知りたい
京都を舞台としたさまざまな作品で多数の文学賞を受賞し、独自の語り口で日本の新しいファンタジーを切り拓く森見登美彦の人気小説を初舞台化する本作。アニメ版でも脚本を担当し、同じ森見の『夜は短し歩けよ乙女』のアニメ映画の脚本、舞台版の脚本・演出も手掛けた上田誠が脚本と演出を務めることも話題だ。
伊野尾は主人公の冴えない大学生「私」を演じ、加藤史帆、剛力彩芽、大窪人衛、池田一真&純(しずる)ら個性派キャストと共に複数の並行世界を行き来する、おかしくもほろ苦い青春ストーリーに体当たりする。
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――大人気小説を舞台化する本作。出演のお話を聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?
伊野尾:すごく楽しそうだなと思いました。元々小説だったものが、アニメになって、今度は舞台へと形を変えていくのが面白いなと思いましたし、小説やアニメの良さも引き継ぎつつ、新しさも表現できたらいいなという気持ちでいます。
メンバーの有岡(大貴)がアニメ版やヨーロッパ企画のファンなので、「すごく似合いそうだね」と珍しく言ってくれました(笑)。
――台本を読まれてみての印象はいかがでしたか?
伊野尾:ヨーロッパ企画さんの作品を拝見すると、舞台が構造的に面白く表現されていることが多いと感じていましたが、台本を読むと言葉のやり取りが面白くて。構造的なギミックの理系的面白さだけじゃなくて文系的な言葉の面白さもあるんだという印象を持ちました。そういう作品に挑戦するというのはプレッシャーもあります。
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タイムリープを繰り返していく感じが台本で読んでいても面白くて、これをどう舞台で表現するんだろうと。きっと新しいエッセンスを入れていくと思うので、すごく楽しみになりましたね。
あと、小説もアニメもすごいスピード感で進んでいくじゃないですか。舞台も1人でいっぱいセリフをしゃべり続けなきゃいけないのかなと思っていたんですけど、そんなでもなかったです(笑)。
――ヨーロッパ企画の作品をご覧になられての感想は?
伊野尾:客席に男性が多いのが新鮮でした。会場が一体となって右肩上がりに盛り上がっていく空気感も初めてだったので、すごくいいなと思いました。
――上田さんとはお食事に行かれたとか。
伊野尾:舞台を拝見した時にご一緒しました。その時ちょうど『家政夫のミタゾノ』でご一緒した平田敦子さんもいらっしゃっていて。上田さんと作品のことをいろいろ話したかったんですけど、平田さんがずっと「舞台に出させろ」と言っていてあまりちゃんとお話できなかったです(笑)。
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上田さんはいろんなアイデアや考え方をお持ちで、クリエイターとしてどんな脳みそをしているのかすごく気になります。だって、本を書く力があって、かつ演出する力もある、それって真逆の方向性だと思うんです。本を書くというのは文系的な考え方で、演出的なところではギミックで本の世界を表現したりと理系っぽさもある。その両軸が頭の中にあるのがすごく面白いですよね。稽古を通して身近で接する中で、こういう表現方法するんだ!というのをいろいろ知れたらいいなと思います。
◆学業&仕事に追われた大学時代はサークルに入れず
――演じられる「私」はどんなキャラクターだと捉えられていますか?
伊野尾:ひとり喋りというか、独りよがりというか、自分の中に秘めている内々の言葉や悶々とした感情が、このキャラクターの面白さだと感じました。それをどう表現するかというのがこの役を演じる面白さなのかなって思います。
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台本を読んでいるとツッコミ側に回っているところもあったりするので、そのテンポ感や空気感、ちゃんと笑いにするツッコミの仕方が難しそうだなと思いました。そこはいろいろ考えて工夫しながら頑張らなきゃいけないですね。言葉のリズム感やテンポ感、耳なじみのよさというのを意識してやれたらいいなと思っています。
――鬱屈としたものを抱える人物ですが、ご自身の大学時代と比べると?
伊野尾:もうだいぶ年を取ったので、大学生活のことをあまり思い出せなくなってきちゃって(笑)。でも、どちらかというとバラ色のキャンパスライフ!みたいな感じではなかったような気がします。理系でしたし、提出物や徹夜、終わらない課題が多くて。男子で集まって庭でお弁当を食べたりと、あまり男女の交流はなかった学生生活でした。
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――主人公はバラ色の大学生活を夢見て、いろいろなサークルに入ったりしますが…。
伊野尾:確かに僕も大学に入る前はキャンパスライフ=サークルみたいなイメージがあって、ちょっとドキドキワクワクしていました。僕の通っていた大学では、1年生が通っていくキャンパスの坂にサークルの勧誘がいっぱいいて。僕、怖くてその坂を通るのをやめちゃったんですよ(笑)。もしもその坂を通って何かのサークルに入っていたら、もうちょっと違った未来があったかもしれないですね。今思い返すと、何か入ればよかったな。建築サークルみたいなのもあったし、テニスサークルとか全然違うサークルに入ってもよかったですよね。
ただ、いかんせん時間がなかったんです、本当に忙しくて。学業も提出物がすごく多くて、それが結構大変だった印象があります。
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――主人公の「私」は「腐れ大学生」と表現されていますが…。
伊野尾:僕も腐れ大学生だったと思いますよ。でも演じる上で、腐れ大学生を演じようっていう気持ちはそんなにないかもしれないです。台本を読んでいると、1人で悶々としている時間よりも、いろんな人と会話したり、会話の中にいたりというところがあるから、そんなに腐れ大学生感は意識していないです。小津さんとの関係性がアニメよりもしっかり描かれている印象があったので、そう感じたのかもしれませんね。
――出演が解禁された時に「35歳、大学生役、頑張ります!」とのコメントがありました。
伊野尾:まさか35歳で大学生やるとは思いませんでした(笑)。
――全然違和感ないです。
伊野尾:でも見た目がイケてたとしても、やっぱり中身がついていかない可能性が結構あるなと。昔は35歳でこの見た目で大学生は…という気持ちの方が強かったですけど、見た目は意外とどうにかなるなと(笑)。いかんせん中身の方がどんどん年を取ってしまって、気持ちを大学生にグッと引っ張ってこれるかっていう不安の方が大きいです。
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◆稽古期間から規則正しい人間らしい生活が送れる舞台は楽しい
――舞台への出演は2年ぶり。伊野尾さんにとって舞台の面白さや難しさはどんなところにありますか?
伊野尾:作品の頭からお尻までキャラクターを演じられるというところはやっていて楽しいというか、ノンストレスでできる感じがあります。自分で感情表現をするということは楽しいことだと思うので、舞台は面白いですね。
難しさでいうと、なんか舞台っていうものがすごく閉鎖的な感じがして、そこはちょっと難しいなって思う。期間の短さだったり、数に限りのあるチケットを先に販売してある程度もう観に来る人が決まってしまうことだったり。本当は観に行った人から「これ楽しかった!」っていう話を聞いて「じゃあ私も行ってみようかな」となることで広がりが生まれるっていうのがあるような気がするけど、日本ではなかなか難しいというか…。
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――舞台はノーストレスだというのは意外でした。
伊野尾:自己表現だから。やっぱりやったら楽しいんですよね。人間きっと誰しも本能的に、歌ったり、踊ったり、お芝居したりっていうのはやったら楽しいんじゃないかなって思うんです。
それに稽古って人間らしく健康的にしてくれる。集まって、みんなで大きい声を出して、感情表現して、終わったら帰ってご飯を食べて寝て。人間らしい生活というか、人間にさせてくれるなという感覚があります。
もちろんセリフに追われたり大変なことやプレッシャーはあるんですよ。でも振り返ってみると、人間らしい生活をさせてもらって、割と健康的で健全な暮らしができるので、その喜びのほうが上回るというか。
――上田さんが伊野尾さんのことを「その涼やかな外見の中に、煩悩や邪悪や面白をたくさん渦巻かせていそう」とコメントされていました。
伊野尾:当たってます(笑)。煩悩と邪悪にまみれてますね、悲しいことに。ほんと余計なことばっかり考えちゃって…。舞台の難しさで、公演日数の話や広がりがないとか言ってる時点で、もう煩悩と邪悪さにまみれているなという感じがする。舞台は毎回“生”だから緊張するとか言っときゃいいのに(笑)。
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今回の役をやるにあたっては、煩悩と邪悪さを捨て去って、素直な気持ちでまっすぐな大学生をやりたいと思います。この役でそれが正しいのかはわからないけど(笑)。
――(笑)。「私」はサークルに入ることが分岐点となりますが、もし伊野尾さんがタイムリープできるとしたら、どの分岐点に戻りたいですか?
伊野尾:どこだろう……。大学でサークルに入っておけばよかったなというのは結構思いますね。あとは芸能の仕事をやるかやらないか。やらなかったらどうなっていたのかな?とは考えます。Hey! Say! JUMPじゃなかったら?違うグループに入っていたら?というのもあるかもしれないですね。JUMP以外にいるのはあまり想像がつかないですけど…。
(取材・文:近藤ユウヒ 写真:米玉利朋子[G.P.FLAG inc.])
舞台『四畳半神話大系』は、東京・新国立劇場 中劇場にて5月17日~31日、大阪・東京建物 Brillia HALL 箕面(箕面市立文化芸能劇場)にて6月4日~9日上演。
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